どうもみなさん、お元気ですか?
色んな世界に片足を突っ込んでみていたら、そのまま片足を置いてきた忘れん坊のカタアシです。
よく、「目とか耳とか二つあるものは一つくらい無くなっても大丈夫!」とかいう人いるけども、全然大丈夫じゃないから、なくしてからもう一度言ってみろマジで
もし、「ほら、大丈夫だろ?」なんて万が一にも言えたなら、私が責任もってなくした体の一部になってみせる。
それはもう全力でジョジョのスタンドみたいになる
目をなくしたなら背中にぴったりくっ付いて、ドラレコばりに全方向360度見渡します。しかも実況付きで
「ちょwwあの左から歩いて来る人wめっちゃ見てくるんですけどwwwなめまわすように見てくるwwウケるwww」
なんて、状況は全然大丈夫じゃないが
とにかく、何が言いたいかというと、自分の障害をさらけ出して出歩くのを邪魔するやつがいる
誰の心の中にでもいる、そいつ
それは「羞恥心」
花も恥じらう乙女かな
(カタアシが初めて短パンで義足を出して出かけた脳内)
「自己肯定感さん」と「羞恥心ちゃん」の会話
「ハ、、、、はずかしいよぅぅ///」
「大丈夫、何も心配ないよ、さぁ君の本当の姿を見せてくれ」
「で、、でも、みんなに見られちゃう////」
「いいじゃないか、見せつけてやろう」
「自己肯定感さん」に背中を押されて、初めて義足を出して路面電車に乗った日を私は
生~涯~わ~すれる~~ことはないでしょぉ~~お~う(aiko)
退院して、義足にも慣れてきたころ、季節はすっかり夏
カタアシは祖母の家でダラダラ過ごしながら毎週病院にリハビリで通っていました。
通院手段は路面電車
どれだけ席が空いていても座らない、常に自分に試練を課す男
そして、窓の外を遠い目で眺めながら「ふぅ・・」と、ため息をつくミステリアス
しかし、はたから見たら汗だくの小太りがただ息を切らしているように見えただろう
ただ、座らないのには理由がある
義足にはいくつか種類があって
カタアシのは、残った足の型をとって下のほうに100円玉くらいの穴が開いてる、吸着式ってタイプ
装着するときは、足に風呂敷とかを巻いて義足に滑り込ませて、下の穴から風呂敷だけを抜いて、穴にバルブをはめる
まぁ、吸盤みたいな感じで足にくっついてるわけ
当然、座ったり、足が引っかかったりして隙間が空くと、空気が入って足が抜けてしまう
抜けた足に体重をかけて中の空気を抜くんだが、この時に音が鳴る
行き場をなくした空気がバルブから、おならのような音を立てて
そう、席に座らないのは、義足に空気が入らないようにする為でした。
考えてみてほしい、揺れる電車内で、微妙な体重移動で義足から音を少しも出さずに空気を抜くこの難しさ。
一つ間違えれば狭い電車内に響き渡る音のプレッシャー
自分にはまだ早い、そんな「すかし」ができるレベルには自分の心も体幹もまだ達していないと、謙虚なカタアシは席に座ることを極力避けていた。
しかし、初めて義足を出して電車に乗ったあの日はいつもと違った。
席を譲られたのだ。
常に紳士であれ
「ふぅ・・ふぅ・・今日はいつもより混んでるな」
珍しく席が埋まっている電車に乗り
いつものように隅に陣取るカタアシ
近くにはキャッキャッとうるさい女子大生の二人組がいた
「あー、もう夏だわー夏までに彼氏作るつもりだったのに全然出会いないわーー」
「あんたは、えり好みしすぎなんだよー」
「えーそんなことないよー!普通に働いてて、スポーツカーに乗ってて、三ツ星レストランに連れてってくれる 花沢 類 みたいな人がいい」
「いねーよ!!」
いねーよ!!あまりのツッコミどころ満載の会話に思わず、チラ見してしまう(あっ、目が合った)
すると、さっきまでのあほ丸出しの会話から一転、ヒソヒソと話し始める女子大生
「ねぇ、あの人・・・・じゃない?」
「だよね・・席・・・ほうが・・のかな?」
やばい・・・なんか、悪口言われてるかも。確かに今日は暑くて汗かいてるし、ふぅふぅ言ってるけど・・それか、俺が 花沢 類 にでも見えているのか?「まーきのっ!」とでも言えばいいのか?
自分でも役不足は分かっているが、女子大生の一夏の思い出くらい作ってあげたい
そんな決意を固めて脳内で「まーきのっ!」を練習していると、
「あのー、座ります?席詰めたら空くのでどうぞ」
なんと、女子大生が席を詰めて人が座れるスペースを作ってくれるという。
ありがたい、ありがたいけどいったい何故?生まれてこのかた席を譲られたことなどない
しかも女子大生が席を詰めてまで、隣に座れと言う
もしや、これは女が男をナンパする、「逆ナン」というやつではないだろうか?
呆けているカタアシをしり目に、席を詰める女子大生
でも、座ると義足に空気が入って、立ち上がった時にとんでもない音が鳴る危険がある
それに私は紳士。女性に声をかけられたからといってホイホイ従うような
「どうぞ!」
「はい・・・」
ありがたく座らせてもらいました。だって善意は断れないし。人のやさしさに触れたのも久々だし。
女子大生の隣に誘われることなんて一生ないかもしれないし。夏の思い出作りたいし。
そんな期待と興奮で満たされた脳内、揺れる電車。そして間もなく到着する終点。
あ、会話は一切なかったです。
それどころか、汗だくのカタアシに気がついて、もうすでに限界まで詰めていた席をさらに空けてきた
一人が浅く座ってその後ろに入り込もうとしていた。
そして、駅到着。乗客はみんな降りるために立ち上がりだしている
カタアシも、一言御礼を言ってから降りようと思い立ち上がったその瞬間。
「あ、あの・・(プ~~~~~!プスゥーーー・・ブピッ!)・・・はっ、はあ!! 」
鳴り響く死の音色、常人であれば聞いた瞬間死んでいたであろうそれは、身がでたんじゃね?という音を最後にあたりを静寂で包んだ
しかし、紳士は常に冷静である。いち早く覚醒したカタアシは誤解を解かねばと呆然としている女子大生たちに口を開いた
「あっ!やべー!!座った時に義足に空気が入って、その空気を抜くために体重を懸けたらバルブから勢いよく出てしまったーーーーー!!!」
かつて、これほどまでに自分の口が流暢に言葉を紡いだことは無かった。必死だった。
そして、全力で状況を説明し終えた後は、わき目も降らずに電車を降りた。
もし、あなたの隣でおならの音が聞こえたら、それはもしかすると義足の人かもしれない。
結局言えなかったけど、あの時の女子大生たち、ありがとうございました!!
カタアシ的に義足で困ること第一位は「おならのような音が出る」でした。
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